カテゴリ:業界NEWS / 投稿日付:2022/11/25 11:38
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令和4年都道府県地価調査結果から、そのポイントを読み解く
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2022年(令和4年)の都道府県地価調査結果(基準地価)が公表された。物価や金利の上昇懸念が喧伝されるなか、土地の価格はどうなっているのか。ポイントをまとめてみた。
不動産取引のモメンタムは「コロナ前」の状況に戻りつつある
いわゆる基準地価は、正確には「都道府県地価調査結果」と称されているもので、各都道府県知事の名のもとに、その年の7月1日時点の地価を調査して公表される。
ちなみに、国が毎年1月1日時点における全国の地価を調査し、公表するのが「公示価格」で、この公示価格と基準地価は、調査対象となる地点が重なるところも多く、これらの水準を見ることによって、一般に行われている土地取引に適用される価格の参考指標になる。
9月21日に公表された基準地価の基準地数は2万1,444地点。全国平均で見ると、住宅地は前年比0.1%の上昇で、これは実に31年ぶりの上昇となった。商業地は同0.5%の上昇で3年ぶり、工業地は同1.7%の上昇で5年連続の上昇となっている(次ページ表参照)。
上昇率の高さを不動産取引のモメンタム(勢い)と考えるのであれば、住宅地と工業地は新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前の状態を取り戻しつつあるといえる。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まったのが2020年に入ってからなので、2019年7月1日を基準日とした基準地価は「コロナ前」といえるが、その時点の全国平均値は、住宅地が0.1%の下落、商業地が1.7%の上昇、工業地が1.0%の上昇だった。
そして2022年7月1日時点は前出のとおりだから、住宅地と工業地の上昇率はコロナ前を上回っている。
特に工業地は5年連続上昇と非常に力強い動きを続けているが、この背景には、コロナ禍においてeコマース(オンラインを通じた販売)が堅調となり、大型物流施設の用地の需要が高まったことに加え、近年、日本に生産拠点を回帰させる動きがあることによる影響もありそうだ。
労働コストの上昇によって、中国が世界の工場足り得なくなりつつあることや、今回のコロナ禍によって、グローバルサプライチェーンの再構築と国内生産体制を強化する動きが出ていること、さらに言えば昨今の円安によって、ドルベースで見たときの日本における生産コストが安くなっていることなどが、日本に生産拠点を設ける動きにつながっていると考えられる。
とりわけ、足もとの円安傾向が当面続くとなれば、海外メーカーが日本を生産拠点の1つに選ぶ可能性もあり、それが工業地の地価上昇を加速させることも十分に考えられる。
ただ、きびしいのは商業地だ。全国平均で見ると、2019年7月1日時点が1.7%の上昇だったのに対し、2022年7月1日時点は0.5%の上昇に過ぎない。取引の勢いという観点からすると、まだまだコロナ前の状態には達していないのが現実だ。
地方の住宅地は今後も厳しい状況が続きそう
こうした動きを圏域別に見ると、また違った側面が顔をのぞかせる。
まず住宅地を見ると、東京圏は2021年7月1日時点の0.1%上昇に続いて2年連続の上昇となり、かつコロナ前の上昇率を上回っているのに対し、大阪圏は2021年が0.3%の下落だったので、ようやく底入れした段階だ。
一方で、名古屋圏は東京圏よりも上昇率が高く、2021年の0.3%上昇に続き、今回は1.6%という大幅上昇となっている。
また地方圏のなかでも地方四市である札幌、仙台、広島、福岡は、東京圏や名古屋圏よりもさらに活況で、2019年が4.9%の上昇、2020年が3.6%の上昇、2021年が4.2%上昇で、今回が6.6%の上昇となっている。
逆に、地方四市以外の地方圏は非常にきびしく、2019年が0.7%下落、2020年が1.0%下落、2021年が0.8%下落、2022年が0.5%下落だ。
地方における住宅地の値崩れの原因は、明らかに人口減少の影響だといえる。若い世代を中心に東京圏、大阪圏、名古屋圏などの大都市圏に加え、地方圏でも地方四市のような中核都市への人口移動が続くのは、地方に仕事がないからだろう。
あるいは高齢者中心の人口構成となっている地方においては、高齢者の自然死によって人口が減少するという現実もある。高齢者が亡くなった後、住んでいた建物が空き家になり、それが地価下落に影響を及ぼしていることも、地価下落が続いている要因の1つとして考えられる。
地方の工業地には少し希望が出てきている
ただ、少し希望が持てるかもしれないのは、前述した日本に生産拠点を新たに設ける可能性があること、あるいは回帰する動きが見られることだ。
工場の立地は大都市圏よりも地方圏が中心になるので、生産拠点ができて雇用が生まれれば、地方に住んで、地方で働くというスタイルが定着する可能性もある。
実際、住宅地については価格下落が続く地方圏だが、工業地の地価を見ると、地方四市の場合、2019年が5.5%の上昇、2020年が5.3%の上昇、2021年が7.4%の上昇、今回が10.3%の上昇であり、その他の地方圏でも、2019年が0.3%の上昇、2020年が0.2%の下落、2021年が0.3%の上昇、今回が1.0%の上昇となっている。もちろん、その他の地方圏は地方四市にはまったくかなわないものの、それでも徐々に上昇トレンドを描きつつある。ちなみに、地域別の細目でみると、TSMC(台湾積体電路製造)とソニーグループが半導体生産の新工場を建設することが決まった熊本県菊陽町の工業地が31.6%という大幅上昇で、全用途のなかでも上昇率で1位になっている。
最後に商業地を見ると、2022年7月の上昇率を、住宅地の上昇率と比べると、絶対値としては商業地のほうが、住宅地を上回っている。
しかし、東京圏、大阪圏、名古屋圏、地方四市、その他の地方圏のいずれも、コロナ前の上昇率を超えられていない点が、商業地のきびしさを物語っている。
商業地に関しては、海外からの観光客受け入れが完全解禁されるのを待つしかないと思われるが、これも足もとの円安が追い風になる可能性がある。当然のことながら、円安が進むほど、海外からの観光客にとって日本は、経済的に非常に旅行しやすい場所になる。
日本政策投資銀行と日本交通公社が実施した調査によれば、コロナ後、外国人が旅行したい国のトップに日本が選ばれているが、新型コロナの水際対策の大幅緩和は、これまで低迷が続いた商業地の地価上昇につながるきっかけになる可能性がある。
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本日は以上となります。
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